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もうひとつのスペースエンジン

Siggraphの会場で、久しぶりにDenver MuseumのKa Chun氏と会いました。最後に会ったのはシカゴの天文可視化ワークショップの時で、もう2年ぶりくらいになります。

彼は研究者であるとともに、Denverのデジタルプラネタリウム用にリアルタイムの天文可視化ソフトウェア、「CosmicAtlas」を開発していた一級のプログラマでもあります。CosmicAtlasは地上から宇宙の果てまでをリアルタイムに描き出すスペースエンジンの一種で、演出向けに練りこまれた「魅せる」インターフェースとボリューメトリックな銀河レンダリング(Mitakaよりも前)が特徴でした。当時から、大手プラネタリウムベンダー以外の独立系スペースエンジンとしては、AMNH/ヘイデンプラネタリウムのUniview、DenverのCosmicAtlas、そして国立天文台のMitakaが突出した存在でした。  そのころUniviewはAMNHの、CosmicAtlasはDenverの秘蔵ソフトウェアであり、開発者同士の顔はつながっていたものの上層部の意志決定がなされぬまま、ただただ並行して開発が続けられていました。シカゴの夜、Ka Chun氏とAMNHのCarter氏とバーで飲みながらずっと話し込みました。僕たちはあまりにも近くで同じものを作っている。僕たちは、ただただ一番素晴らしいものを、できれば一緒に作りたいんだ。きっといつか、一緒に最高のスペースエンジンを作ろう、と。

Ka Chunの話では、いまやDenver Museumはソフトウェアの開発者を維持することをやめてしまい、デジタルドーム用のリアルタイムシステムとしてはUniviewが導入されているそうです。CosmicAtlasの開発を中断せざるを得なくなった彼の気持ちには複雑なものがあったかと思います。しかし、いち開発者として、Univiewのユーザーとして、CosmicAtlasの技術をUniviewに活かしたいと言ってくれました。私たちの手には今、Univiewがあり、CosmicAtlasがあり、Mitakaや太陽系シミュレーター、これらすべてをひとつにつむぎ合わせることのできる場があります。

ずいぶんと時間が経ち、いろいろなものが変わってしまいましたが、ようやく、一緒に目指すものを創りあげることができそうです。

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開発中のつぶやきや裏話など、筆に任せて綴っています。