DOCUMENTS

投影補正パラメータの共通化(Standardization of the projection parameters)

平面以外のスクリーンに対してプロジェクタで投影を行うと、その投影像はスクリーンの形状によって歪んでしまいます。円柱型スクリーンのような Virtual Reality 施設や、プラネタリウムなどのドーム施設でプロジェクタによる投影を行う場合、このようなスクリーン形状による歪みを補正してやることが必要不可欠です。これを「形状歪み補正(ジオメトリ補正)」と呼びます。

また、広いスクリーン面に高い解像度で投影を行うには、複数台のプロジェクタでの投影が一般的です。しかし複数投影時には、投影の重なる部分が多重に照らされて明るくなってしまうため、部分的な輝度補正を行う必要があります。これを「エッジブレンディング」と呼びます。

このような形状歪み補正やエッジブレンディングの技術は、大型映像や Virtual Reality 施設の構築などで昔からの課題であり、近年実用化が進んでいるデジタルプラネタリウムでも「スライシング」と呼ばれる必須の技術となっています。

これらの解決には、まずスクリーンの形状とプロジェクタの配置から決まるシアターごとの投影補正パラメータを正確に算出し、それをもとにオフラインあるいはリアルタイムでコンテンツ映像の補正を行います。リアルタイムの補正についてはこれまで専用ハードウェアを用いたものが主流でしたが、近年のグラフィックスカードの技術進歩によって、これをソフトウェア+グラフィックスカードのアクセラレーションで行うことも可能になってきました。

これまで、こういった投影補正技術は、シアターを構築したハードウェアベンダーがそれぞれ独自の手法で実装してブラックボックス化されたまま納品されることが多く、投影補正パラメータの仕様などの技術的詳細が公開されたり、標準化されることはほとんどありませんでした。またその手法も、それぞれのハードウェア環境やスクリーン形状に特化した方法であったり、リアルタイム性などの考慮がなされていないものも多くありました。そのため、画像やムービーなど、あらかじめ想定されていたコンテンツフォーマットは上映できるものの、独自に開発されたリアルタイムアプリケーションなどは、ブラックボックス化された投影補正技術にアクセスできないために利用できなかったり、独自にまた投影補正技術を開発する必要がありました。こうした事情から、特殊スクリーンや複数台のプロジェクタを用いたイマーシブコンテンツは、極めて移植性が悪く特定シアターでだけ上映される作りっぱなしとなってしまうことが多かったのです。

そこで、特にリアルタイムアプリーケーションからの要求を主眼に、

  • 様々なスクリーン形状での投影に対応できる投影補正パラメータの定義
  • 投影補正パラメータを算出するためのツール
    Projection Designer
  • リアルタイム補正処理ライブラリ (要プログラム修正)
    GLRC Library
  • リアルタイム補正処理ユーティリティ (プログラム修正不要)
    OpenGL Override DLL
  • 画像・動画の投影補正コンバータ
    Cubic Movie Converter

を定義・開発し、オープンソースのプロジェクトとして公開することにしました。

この投影補正パラメータ仕様を公開する目的は、イマーシブコンテンツの上映環境を構築するための手段を広く共有し、イマーシブコンテンツの流通性を高めることです。多くのシアターでこの仕様に基づいて投影補正パラメータが算出されれば、リアルタイムアプリケーション開発者やイマーシブコンテンツ制作者はシアターごとの投影方法を気にすることなくコンテンツの制作と提供を行うことができ、これらのシアターはより多くのコンテンツが利用できることになります。

また、投影補正パラメータを算出するためのツールや上映のためのソフトウェア等を無償でオープンソースのもと公開することで、各シアターは基本的に追加投資無しでこれらの仕組みを取り入れることができるようになります。

これらの仕様、ツールが出揃っても、依然、既存のハードウェアによる投影補正技術や自動補正技術のような製品、ソリューションにもメリットはあります。自ら補正調整を行ってみれば、この補正投影パラメータの正確な算出がいかに大変なものかも実感できるはずです。これを容易に行ってくれる製品は可能であれば大いに利用すべきですし、今後はこういった補正調整のサービスがビジネス化されることも期待できるでしょう。

大切なことは、各地に点在するこれまでの、そしてこれからのイマーシブシアター(デジタルプラネタリウムや CAVE、様々な Virtual Reality 施設)を孤立させず、この仕様「にも」対応させることでコンテンツの流通と業界の活性化を図る、ということです。

ぜひ、この投影補正パラメータの共通化の取り組みに賛同と御協力をお願いいたします。

投影補正パラメータ

投影補正パラメータの仕様と実装例については、Projection Designer のドキュメントを参照してください。近日中に当記事にて改めてまとめます。

関連リンク

外部リンク

ページの先頭へ