更新日 2012.02.18
プラネタリウム向けの外部入力映像合成システム()
これまで、プラネタリウムなどのドームシアターにおいて、持ち込みPCやDVDプレーヤーなどの映像を投影するには、別途プロジェクタを用意して既存設備からの映像に重ねて投影を行う手法が一般的でした。しかしこの方法では、映像の投影範囲がプロジェクターやレンズの仕様に依存し、複数箇所への投影には同数のプロジェクタの追加が必要になります。また、プラネタリウムなど特に高いコントラストが要求される施設では、プロジェクタの追加によるコントラストの低下が問題となります。
そこで、より手軽に自由度の高い外部入力映像の合成を、ソフトウェアとビデオキャプチャカードの組み合わせによって実現してみました。これにより、単に追加プロジェクターとしての利用のみならず、以下に挙げるように非常に広範な応用が可能になります。
システム接続図
対応ソフトウェア
- AMATERAS Media Player Pro ver. 1.4以降
- Quadratura ver.1.2.2以降
- Mitaka Pro ver.1.5.4以降
- UNIVIEW ver.1.4(日本語版)以降
メリット
・ 外部入力映像の投影のために追加プロジェクタを用意する必要が無い
講演会などで持ち込みノートPCの画面を投影するには、既存設備とは別に追加のプロジェクタを用意するのが一般的です。しかし、もちろんプロジェクタの追加には導入費や維持費がかかります。今回のシステムでは、ビデオキャプチャカード(ひとつ2万円程度)などの追加だけで、安価に維持費もなく外部入力映像の投影が可能です。
・ 自由なレイアウトで任意の数の外部入力映像を投影することができる
プラネタリウムでは、光学投影機の陰になったり、円周席で観客の正面が場所によって異なる場合などには、映像を複数の場所に同時に投影する必要があります。今回のシステムでは外部入力映像を好きな数だけ、自由な位置に投影することができます。投影サイズも追加プロジェクターのような制限はありません。
・ プロジェクタの追加によるコントラストの低下を避けることができる
暗さを重視するシアターでは、追加プロジェクターから漏れる余分な光をしっかり防ぐ必要があります。また、追加プロジェクターは黒背景でも白浮きしてしまうため、演出で使うには既存設備の映像となじまないという問題もありました。今回のシステムではこうした問題が一切ありません。
・ あらゆる外部入力映像にドーム映像補正を適用することができる
追加プロジェクターを使う場合と同じように、ノートPCからのパワーポイントやDVD/BluRayの再生など、使い慣れた機器による映像をそのまま利用できます。ソフトウェアの映像補正機能によって、ドームスクリーン上の歪み補正なども適切に行われます。
・ 既存設備に一切の変更を行わずに投影内容が更新できる
シアター施設では安定運用が重視されるため、コンテンツの試写などを行いたくても普段の上映に影響しないよう細心の注意を払う必要がありました。今回のシステムでは外部入力映像機器から映像入力を行うことで、既存設備に一切変更なしでビデオキャプチャ解像度(1920x1080, 30fps)までの試写(平面・全天周など)を行うことができます。
・ 直接インターネット接続しなくてもオンラインコンテンツが利用できる
シアター施設の多くは、セキュリティーポリシーや安定運用のために上映用システムがインターネットに接続されていません。しかし今回のシステムでは外部入力映像機器からの映像信号だけを取り込むため、物理的に一切のセキュリティリスクなしにインターネット上のリソースを上映に活用できます。
・ 対応ソフトウェアから自由に制御できる
外部入力映像が上映用ソフトウェアから制御できるので、照明や音響などの外部機器と同じように表示位置や透明度を操作卓のフェーダに割り当てたり、自動化したりすることができます。
利用例
・講演会のプロジェクター代わりに
講演者の持ち込んだPCの映像をひずみなくドームスクリーン上に投影できます。どんな座席配置にも対応して投影画面をレイアウトできますし、Quadraturaのようなドームプレゼンテーション機能と組み合わせてドームスクリーン全体を活用できます。
・映画上映用システムとして
外部映像入力としてDVDやBluRayのプレーヤーをそのまま接続することができるので、ドームスクリーンにひずみなく好きなだけ大きく引き伸ばして映画などを上映することができます。
・遠隔会議システムとして
プラネタリウム間で遠隔会議システムが実現できます。用意としてはモバイル通信などでインターネット接続したノートPC上に、Skypeなどを全画面表示するだけです。既存設備には追加のソフトウェアもインターネット接続も必要ありません。
・プラネタリウムでのオンラインコンテンツの利用
遠隔会議だけでなく、ドームスクリーン上に様々なインターネット上のコンテンツを投影できます。ウェブ閲覧、リモート望遠鏡、Google Earth/SkyやWorld Wide Telescopeなど、無数のオンラインコンテンツが活用できます。
・ライブ解説用補助投影機として
操作卓手元のノートPCから、パワーポイント、ウェブ画面、天文ソフトなど、使い慣れたあらゆるソフトをドームスクリーン上に投影できます。外部入力映像の表示・非表示は投影用のソフトウェア上でいつでも切り替えられるうえ、非表示状態のまま手元のノートPCを次画面モニタとして次に出す画面の準備もできます。
・講演者や演示実験のクローズアップ画面として
ビデオカメラ映像をそのまま大きく投影できますので、大きなシアターの講演会で講演者の様子を大写しにしたり、演示実験など手元の細かな様子をクローズアップして見せることができます。
・プラネタリウム操作研修会に
コンソールでの操作の様子をビデオカメラで撮影し、ドームスクリーン上に合成表示することができます。ライブ投影のテクニックなど、暗いドーム内でプラネタリウム操作の研修会を行うのに最適です。
・全天周映像の試写ツールとして
これまでのドーム全天周映像制作では、試写をするにもあらかじめスライスしたり、既存システムにコピーして再生スクリプトを書いたりと手間や知識が必要でした。今回のシステムでは、接続したノートPCでドームマスター動画を再生するだけで、これをリアルタイムスライスしながら試写できます。スライスどころかファイルのコピーも不要です。
・ドームストリーミング中継の実現
魚眼撮影した静止画や動画を、全天周映像としてドームスクリーンに生中継できます。日食中継はもとより、アラスカのオーロラ、マウナケアの山頂、海底、高速を走る車上からなど、魚眼レンズ付きのウェブカメラからストリーミングしておけば、チャンネルを切り替えるような手軽さでその場にいるような映像体験ができます。
・簡易テロップ合成装置として
外部入力映像は、黒背景を抜いてその他の投影像に合成表示することができます。全天周映像に手を加えることなく、例えばパワーポイント一つでテロップや字幕を作って合成することができます。
・アンケート・クイズ画面の投影機として
プラネタリウム番組の演出でアンケートやクイズを行う仕組みを、ノートPC上で簡単に作成してドーム投影することができます。この画面の表示位置やタイミングなどは、番組スクリプトから自動化することもできます。
・手話映像合成装置として
聴覚障害者にプラネタリウムのライブ解説を伝えるために、手話映像を合成表示することができます。赤外撮影(市販のビデオカメラのナイトショット機能)であればドーム内照明なしで手話解説の様子を撮影し、ドーム映像の見やすい位置に適切な明るさで合成表示できます。
・外部入力映像を使ったインタラクティブコンテンツの実現
ビデオカメラで撮影された映像を使ってインタラクティブなコンテンツを実現できます。重力レンズで顔を歪めてみたり、撮影像を貼り合わせてインタラクティブなドーム万華鏡を作ってみたり、アイデア次第でドーム空間を様々に活用できます。