概要
Quadratura(クアドラトゥーラ)は、画像やムービー、3Dモデルから全天周映像まで、様々な素材を簡単な操作で表示することができるリアルタイムプレゼンテーションソフトウェアです。複数台のPCを使っての多画面合成やプロジェクターの投影補正機能を内蔵しており、ドームシアターや立体シアターなど、あらゆるシアター環境で空間全体を活用した演出を可能にします。タイムラインを利用したアニメーション制御やスクリプトを駆使して、自動番組の制作やインタラクティブな映像コンテンツの制作にも活用できます。
利用例
プレゼンテーションのツールとして
Quadraturaはパワーポイントなどのソフトウェアと同様の使い勝手で、画像や動画など様々なオブジェクトを使ったプレゼンテーションを行うことができます。プレゼンテーションは平面上に限らず、ドームスクリーンなどの曲面に複数のプロジェクターを使って投影することで、より広い範囲に歪みのない映像を表示することができます。Quadraturaではインタラクティブな利用を想定して設計されているため、プレゼンテーションをしながら観客との対話の中でオブジェクトを加え、内容を書き換えていくようなライブプレゼンテーションを実現することができます。
空間デザインツールとして
Quadraturaの映像は、スクリーン上にオブジェクトを並べるだけにとどまりません。オブジェクトをスクリーンの奥や手前に浮かべるような、3次元的な空間レイアウトが可能です。これにより、これまでのスクリーン面に縛られた映像から大きく飛躍した、空間的な演出効果を得ることができます。立体投影が可能なシステムを利用すれば、立体映像空間として表現することも可能です。
3DCGソフトウェアを使った全天周映像や立体映像を作りたいと考えたら、実際のシアター環境でQuadraturaを使ってあらかじめオブジェクトの配置や動き、演出を練っておくと良いでしょう。あるいは、Quadraturaのアニメーション機能を使って、そのまま映像を作り上げてしまうことも可能です。
プラネタリウムの補助投影機として
Quadraturaが実現する全天周映像表現は、ドームスクリーンを持つプラネタリウムとの併用が効果的です。プラネタリウムの星に重ねて投影することで、ドームに歪みなく説明用の画像やテロップを表示したり、注目してほしいポイントを星空の上にペンでマーキングしたりといった、多機能な補助投影機として活用することができます。
Quadraturaはさらに、Mitaka ProやUniviewといった本格的な天文シミュレーションソフトウェアに組み込まれたバージョンも用意されています。これにより、あらゆるシアター環境に適応した完全なデジタルプラネタリウムシステムとして活用することができます。
番組制作ツールとして
これまで、ドームなどの特殊な映像空間用の映像を作るのは非常に大変な作業でした。全天周映像では、素材の大きさや表示位置、動きなどが適切かどうか、実際の現場で確認してみないとわからない場合がほとんどです。しかしこのような特殊な環境に映像を投影するには、映像の歪みを補正したり素材ファイルを分配して同期再生させたりといった様々な前処理や手間がかかり、ちょっとした確認に数時間や数日の準備時間が必要でした。
Quadraturaは、こうした工程を革命的に変えてしまいます。例えばQuadraturaを使ってドーム映像番組を作る場合、PCの画面上でドームスクリーンでの歪みを確認しながらインタラクティブに素材をレイアウトし、動きをつけていきます。現場に持ち込むのにドームマスター書き出しもスライス処理も不要で、ただ素材のファイルと小さなスクリプトファイルだけを持参します。現場のドームでQuadraturaを使って映像を投影しながら、その場でインタラクティブに修正を行います。修正が終わったら番組は完成です。そのままQuadraturaを使って上映することもできますし、ドームマスターやスライスされた形で書き出すこともできます。後日、上映館のスタッフが自分でちょっとした修正を加えることすら簡単にできます。これこそ、番組制作ツールとして理想的な姿ではないでしょうか?
インタラクティブコンテンツの制作ツールとして
Quadraturaの多彩なオブジェクトの表示やアニメーションは、タイムラインとスクリプトを使ってすべて制御が可能です。これは、これまでのAdobe社(旧Macromedia社)のDirectorやFlashを全天周映像や立体映像に拡張したものと考えることができます。DirectorのLINGOやFlashのActionScript並みの強力なスクリプト言語を駆使して、博物館のキオスク展示のようなインタラクティブコンテンツをQuadratura上に組み上げることができます。マウスやキーボード、ジョイスティックやMIDI信号などの各種入力デバイスからの操作や、映像だけでなく音声や調光などの外部機器の制御を行うことも可能です。これらを駆使して、ドーム空間や立体映像空間でのインタラクティブなメディアアートを制作してみてはいかがでしょうか。
特徴
直感的な操作
Quadraturaはすべてのオブジェクトを3次元空間で扱いますが、その配置や編集は2次元のスクリーン面上で行えます。これによって、パワーポイントや画像編集ソフトのように直感的な操作で画面構成を行うことができます。例えば画像ファイルや動画ファイルをドラッグ&ドロップするだけで表示することができ、さらにドラッグすることで移動や拡大縮小することができます。
操作画面はシアター内での見回し表示、俯瞰表示、ドームマスター表示(全周魚眼表示)に切り替えることができ、シアターの映像空間を常に把握しながら演出を行うことができます。
多彩なオブジェクトの種類と拡張性
Quadraturaで表示できるオブジェクトには様々な種類があります。現在は以下のオブジェクトの表示に対応しています。
- 画像・動画オブジェクト
- BMP、JPEG、PNGなど一般的な形式の画像ファイルや、連番画像、AVI、WMV、MPEG、QuickTimeなどのムービーファイルを読み込んで表示することができます。透過表示にも対応していますので、背景になじませたりロゴを浮かべたりと工夫次第で様々に活用できます。
- 全天周映像オブジェクト
- 画像やムービーファイルを読み込んで、全視野を覆う全天周映像として表示することができます。全天周映像としてドームマスター形式、キューブマップ形式(前後左右上下の映像)、パノラマ形式の各種形式に対応しています。全天周映像に重ねて他のオブジェクトを配置できるため、全天周映像を背景素材としても利用できます。また、透過表示にも対応していますので、全天周映像を迫力のある特殊効果としても活用できます。
- テキストオブジェクト
- 空間内に文字列を浮かべることができます。文書作成ソフトのように複数行のレイアウト、フォントや文字色の装飾などが可能です。このテキストオブジェクトを利用して、字幕や説明文、クレジット表示などを作成できます。インタラクティブにその場での追記・編集なども可能です。
- 3Dモデルオブジェクト
- ポリゴン等で作られた3Dモデルを読み込んで表示することができます。他のオブジェクトとともに3次元空間内に自由に配置できるため、3DCGソフトで行うような空間デザインをリアルタイムに行うことができます。スクリーンから飛び出して目の前を飛び交う3Dモデルのアニメーションは、3D空間ならではの迫力ある映像効果を生み出します。
- FITS画像オブジェクト
- 天体観測画像などで一般的な、FITS形式の画像を読み込んで表示することができます。ヘッダに含まれる撮影情報を確認したり、インタラクティブに現像したりすることができます。
- 自由描画オブジェクト
- お絵かきソフトのようにマウスやタブレットを使ってスクリーン上に自由に絵を描くことができます。注目して欲しいポイントに目印をつけたり、手書きのメモを書き残したり、使い方はアイデア次第です。
- ウェブページオブジェクト
- Flashコンテンツなども再生できるフル機能のウェブブラウザによって、オンラインのコンテンツを表示します。Quadraturaのオブジェクトとして実装されることで、複数画面に渡る表示や曲面スクリーン上でも歪みの無い表示が可能です。
- リモートデスクトップオブジェクト
- ネットワークによって接続された他のPCの画面を転送して、画像オブジェクトなどと同じように空間に浮かべることができます。パワーポイントの画面、ウェブブラウザ、Skypeなど、あらゆるアプリケーションの画面を自在に合成表示することができます。
今後追加が予定されているオブジェクトには以下のような種類があります。
- パーティクルオブジェクト
- リアルタイムに点群を噴射して様々な特殊効果を作り出すことができます。雨や雪などの自然現象、ワープなどの特殊効果など、工夫次第で無限の可能性が広がります。
- ライブカメラオブジェクト
- シアター内の様子を撮影するライブカメラの映像を表示します。シアター内での実験演示を見やすく大写しする拡大投影などに便利です。
- アプリケーションオブジェクト
- 3Dアプリケーションをオブジェクトとして実装することで、投影補正や他のオブジェクトとの連携など、Quadraturaのメリットを活かしたアプリケーションが作成できます。リアルタイムシミュレーションやゲームなどのアプリケーションをQuadratura上で実行できるようになります。
Quadraturaは開発者用SDKによってオブジェクトの種類を追加開発できる、拡張性の高い設計になっています。オリハルコンテクノロジーズ社では、今後も有用なオブジェクトを続々開発していく予定です。ご期待ください。
プレゼンテーション支援機能
Quadraturaは全天周プレゼンテーションを支援する様々な機能を備えています。
- スライドとスライドショウ
- 空間にオブジェクトを配置し、アニメーションなどを施したものを「スライド」として記録できます。これはパワーポイントのスライドに相当する単位で、プレゼンテーションの際には簡単な操作で次々に場面を表示していくことができます。「ランチャー」と呼ばれる専用のインターフェースで、このスライドを並べ替えや、自動的に連続表示するスライドショウを実行することができます。
- バーチャルカーソル
- 複数台のPCとプロジェクターで構成されるマルチ投影環境においても、通常のデスクトップと同様に一続きの空間としてマウスカーソルを動かすことができます。注目点を指し示すなど便利に活用できます。
- 自由描画オブジェクト
- 表示オブジェクトの一つである自由描画オブジェクトを使うと、スクリーン面や空間に自由にペンで線を描くことができます。対話的なプレゼンテーションには非常に効果的です。
- 切り替えエフェクト
- 空間に配置した画像やムービーなどのオブジェクトは、フェードインやワイプなど、様々な切り替えエフェクトで演出を施すことができます。
- レイアウトによる整理
- シアターで最も見やすい位置にオブジェクトが配置されるよう、代表的なオブジェクトの配置例を「レイアウト」として用意しておくことができます。これによりドラッグ&ドロップで手軽に見やすい場所にオブジェクトを表示することができます。また、レイアウトの切り替えによって同じスライドを別のシアター環境に対応させることもできます。
柔軟なリアルタイム投影補正
Quadraturaには、非常に高機能なリアルタイム投影補正技術が組み込まれています。これによって、複数台のPCとプロジェクターを使ったマルチ投影、ドームなどの曲面スクリーンへの歪みの無い投影、様々な立体投影などに対応することができます。リアルタイム投影補正技術によって、Quadraturaで投影している映像を直接マウスで歪めて微調整を行うことすら可能です。
スクリプトによる操作の記録と機能強化
Quadraturaを使った操作は、内部的にはすべてスクリプトのコマンドとして実行されています。そのため、これを記録し適切なタイミングで実行することで、あらゆる操作が自動化できます。スクリプトはLua言語というシンプルかつ強力なスクリプト言語に基づいています。これに習熟すれば、QuadraturaのGUIやショートカットのカスタマイズ、操作を便利にするマクロの作成、外部機器との通信などを自由自在にを行うことができます。さらには、プレゼンテーションタイマーなどの簡単なツールをQuadratura上に自作することもできるのです。
タイムラインを使ったアニメーションと番組制作
Quadraturaを使ったオブジェクトの動きは、タイムラインを使ったキーフレームアニメーションによる制御が可能になっています。このタイムラインはAdobe社のFlashやDirectorのような使い勝手を持ち、さらにスクリプトを組み合わせることによって非常に強力なコンテンツ制作環境となります。このタイムライン上に制作した番組は、実際のシアター環境で手軽に再生や編集が可能で、そのまま本番で上映することも、ドームマスター動画やスライス済みの動画として書き出すこともできます。
開発者
高幣 俊之 (takahei<at>orihalcon.jp)
動作環境
Windows 2000/XP/Vista
Quadraturaは、様々なオブジェクトをリアルタイムに合成表示するために高スペックな実行環境を必要とします。できるだけ高速なCPUとともに使用してください。開発にあたっては、グラフィックカードはGeForce7x00/8x00系での動作を確認しています。
ダウンロード
- プログラム
- 近日公開予定(購入ユーザー様向け)
- ドキュメント
- ユーザーズガイド (オンライン)
開発予定
- パーティクルオブジェクトの追加
- ライブカメラオブジェクトの追加
- アプリケーションオブジェクトの追加
- Univiewとの統合
更新履歴
- 2009/6/25 ウェブサイト公開開始。